2012-03-03

「TV Bros.」12/3/3号に「カーネーション」特集

「TV Bros.」2012年3月3日号の「カーネーション」特集は、名場面集&町山智浩さんのコラムという嬉しい組み合わせ。
名場面集に私の大好きな86話の「ウチはアンタに一言も礼言うてない。アンタも言わんでええ」、115話の「もう寂しい」が入っていて大変嬉しい。

町山さんのコラムは「『カーネーション』は、今のTVドラマや日本映画が失ったものを持っている」というタイトルで、昨今の朝ドラとは一味も二味も違う「カーネーション」の丁寧な演出や個性的な登場人物達を褒め上げるもの。

アメリカ在住の町山さんは「ジャパンTV」というチャンネルを契約し、家族揃って朝ドラを見るのが習慣だったが、最近の朝ドラヒロイン達が揃いも揃って一度やると決めたことを貫かないので娘さんの教育に悪いのではないか、と思い始めたのだという。

夢を貫けないのが現実だから、というのだろうか? じゃあ、あきらめないで成功する「芋たこなんきん」や「ゲゲゲの女房」が実話ベースなのはどういうこと? 想像が現実に負けてどうする?(町山智浩「『カーネーション』は、今のTVドラマや日本映画が失ったものを持っている」より)

朝ドラは基本的に見ない私。
藤山直美目当てに初めて第1話から最終話まで毎回見た朝ドラが「芋たこなんきん」で、その次に初回から最後まで完走したのが「ゲゲゲの女房」、そして、今回の「カーネーション」である。
「ゲゲゲの女房」では、あまりに個性的な夫とその親兄弟が登場し、時々「それはないだろう」とか「いくらなんでもやりすぎ」などと思わされる突飛なエピソードに限って実話だったりするので油断がならなかったが、どうも「カーネーション」もそうらしい。

たとえば、糸子が周防と交際している時に親族会議が開かれ、その席で幼い三姉妹が「お母ちゃんのやることに間違いはない」「お母ちゃんを許して」と親族一度の前で平伏するシーン。
不倫している母親をいたいけな子ども達が守るなんてあざとくない?…なんて思ったら、どうやらこれは実話らしい。すごいぜ実話ベース!
やはり、ドラマで実際のエピソードを入れると浮いてしまうような破天荒な人生を歩んできた人だからこそ、朝ドラの主人公に採用されるのであろう。

さて、町山さんのコラムの中で二カ所気になるところがあった。
一つは糸子と夫・勝が出征直前に歌舞伎を観て、その後、デパートに買い物に行くエピソード。出征後、勝の浮気が発覚するのだが、それを町山さんはこう書いている。

デートのシーンが別アングルからフラッシュバックされる。すると夫は浮気相手と待ち合わせていたことがわかる。ブライアン・デ・パルマが得意とするこの手法を朝ドラで観るとは。(町山智浩「『カーネーション』は、今のTVドラマや日本映画が失ったものを持っている」より

私は、この59話のオープニングに登場するフラッシュバックのシーンは、勝の浮気がわかってショックを受けている糸子の心象風景であって事実を映したものではないと解釈していた。
その気が一切なかったのに親や親戚を巻き込んで気の進まぬ結婚ばなしを勝手に進められ、結婚してからは夫・勝とはただの同僚のようなつきあい方をしていた糸子。
それが、デパートで買ってもらったショールが嬉しくて初めて夫への愛情を確認した矢先の浮気発覚。
結婚以来たいして大事に思っていなかったのに、浮気をされて悔しい、悲しいという気持ちを抱いている自分に混乱した糸子が見た妄想だと思った。

もう一つは、この一節。

糸子の周りの男たちはみんな夫をかばう。お父ちゃんまでが。だんじりと同じだ。男たちが結託して糸子を阻む。(町山智浩「『カーネーション』は、今のTVドラマや日本映画が失ったものを持っている」より

こちらも58話、父・善作と木之元が出征した勝が戦地に行く前に駐屯している大阪へ面会に行こうと誘いにきたところから、善作と木之元に「男なら浮気のひとつやふたつ」的なことを言われてブチ切れた糸子が店を飛び出して、途中、隣家の木岡とすれ違って怒りがさらに激しくなったあたりのモノローグのことであろう。

わかった。ようわかった。ウチのお父ちゃんも木之元のおっちゃんも、木岡のおっちゃんかて、男はみんなでこう言うんや。「男の浮気の一つや二つ、どうっちゅうこちゃないよ。堪忍したれえ」。どうっちゅうことあるかないかは、女が決めるんじゃ! 男同士っちゅうんは、何であんな腐ってんねん!

この台詞の「男はみんなでこう言うんや」からニヤニヤ笑う善作、勝、木之元、木岡の顔が順繰りにアップになり、最後は4人並んで何か企んでいるような顔でニヤニヤ笑うのである。

勝の浮気はまず間違いないであろう。
温泉宿みたいな所で浴衣姿で芸者と二人で写っている写真が動かぬ証拠だ。

善作は「男の浮気の一つや二つでわめくな!」と怒る糸子を逆に叱責。
「跡取り娘が婿に浮気されて恥かかされたのにどうして一緒に怒ってくれないの?」という糸子の思いはもっともである。

そして、「マアマア、けど糸ちゃん、ほんま男の浮気の一つや二つな」などと能天気な声で話しかけてくる木之元はさらにタチが悪いではないか。
アンタ関係ないやろ。これはうちの問題や、小原家の一大事や、他人が口挟まんといて!……ト、つい糸子に感情移入してしまったが、そういうわけで木之元もこの件に関して有罪決定。

で、問題は木岡のおっちゃんである。
怖い顔で商店街をのしのし歩いていく糸子に、いつものように「よう、糸ちゃん」と声をかけ挨拶しただけなのだ。
ただそれだけなのに男というだけで一緒くたに恨まれているのである。
そう、木岡は濡れ衣なのだ。
まあ、善作と木岡は親友だから同じような考え方かもしれないが、なんといっても木岡は恐妻家。木岡のおばちゃん怒ると怖いでえ。

というわけで、町山さん。
結託して阻もうとしたのは善作と木之元だけで、木岡は推定無罪、劇中では何もしてないんですよう。

……とはいえ、それは屁理屈というものだろう。イチャモンつけてごめんなさい。
このように、一つのシーンから様々な解釈ができるのも「カーネーション」の面白さの一つだと思う。

ちなみに「男の浮気の一つや二つ、どうっちゅうこちゃないよ。堪忍したれえ」の台詞の後、大きなお腹を抱えて川に石をがっしがっし投げ込んだけどまだ腹の虫が治まらない糸子は「男と違って女はもっと、こう…」と奈津に愚痴りに行って小馬鹿にされるというシーンに繋がるのだった。
この時の奈津が着ていた紫の地に桜が華やかに咲いた着物がとても綺麗。ああ、奈津の着物を見るのが本当に楽しみだったっけなあ。

さて、オノマチ奈津子と今日でお別れ。親しくしていた近所の子が遠くへ旅だってしまうような寂しさがあるねえ。くすん。【み】